ぐるぐると、出口のないことを考える。
考えごとをする時に、夜はあまりにも長くて、あまりにも静かだ。
眠れない夜の考えごとで、最良の選択ができる人なんているんだろうか。
アタマの中が整理できなくてごちゃごちゃ色んなことを考えてしまっていた日に、
ふと思い立って、遠くに小さく見える東京タワーまで歩いてみることにした。
東京駅から東京タワーまで、Google mapによると徒歩40分ほど。秋の気候が心地いい夜に、程よい距離感だと思った。
高いビルたちに邪魔されて、あるはずの東京タワーは出発早々見えなくなった。
不安が頭をかすめるけど、出来るだけスマホに頼らないようにずんずん進む。耳元では2000年代初頭の宇多田ヒカルが歌ってる。
東京の街は目まぐるしく景色が変わるから散歩に向いている、と言ってたのは映画の転々だったかな。
正直言って、東京駅から東京タワーまでの道のりは大して変わり映えはしなかったけど。
見覚えがあるスポットが頭の中で線になって繋がる感覚は中々に楽しいものだった。
そろそろ見えてもいい頃かな、と3回くらい考えた頃に、窓がぼんやりと赤く光るビルが目に入った。反対側を見るとビルの上からにょっきりと、東京タワーが顔を出していた。
目的地はすぐそこ、と思うと自然に少し早歩きになる。
先っぽだけのタワーが見えてから、その全景を目にするまでは本当にあっという間だった。
約3キロ、たった40分の短い旅だったけど、到着する頃には心地よい疲労感と達成感に包まれていた。
秋の気配を感じて、でっかいタワーを眼前に眺めて。昨晩あれほどこんがらがっていた脳内もなんだかすっきりした気がする。人間は、思ったよりも単純にできているのかもしれない。
考えごとをするとき、眠れない夜は不向きで、歩きながらは具合がいい。そんなことに当たり前のことに気が付いた秋の夜長のお話。